儲かるからとか売れてるからという理由で始めたわけではない。ただ単に好きにだった外国車を追求した結果、いつの間にかビジネスになっていた。
2001年に放映された「マネーの虎」の顔役として、一躍有名人となった南原竜樹氏。一時は国内のフェラーリ販売シェアの50%を占め、外車といえばオートトレーディングルフトジャパン(現:株式会社LUFTホールディングス)と言わしめるほどに成長。その後のローバーの倒産からも見事な復活を遂げ、尚も精力的に活動を続ける南原竜樹氏の「賢者の原点」を紐解いた。
「好き」の熱量がそのままビジネスに
─まずは南原さんが起業されたきっかけからお聞かせください
単純に車が好きだったからです。当時は知識もないんですが、好きだからこそのめり込んでいくわけですよ。結局は〝好きこそものの上手なれ〟に尽きるのかなと思います。好きなことなら続けられるし、どんなに時間を割いても苦にならないじゃないですか。ですから、車が好きという気持ちをそのまま仕事にしただけなんです。そして、私はどんな職業であっても「好き」という感情はとても大切だと思います。
─はじめから車の知識があったわけではなかったのでしょうか
部品や仕組みなどは難しく、最初は理解していませんでした。ところが、のめり込むほど好きになると、人はどうにかして学ぼうとするわけですよ。すると、整備士の資格を持っているわけでもないのに、いつの間にか詳しくなってしまう。好きでもないことをいくら覚えようとしても覚えられません。それは、例え儲かるものであっても極めるのは難しい。やはり好きな人には勝てないし、将来的にも差が広がって追いつけないと思います。
好きを追求したからこそ、たどり着いた並行輸入ビジネス
─はじめから輸入販売を行なっていたのでしょうか
最初は並行輸入ではなく、中古車のレストア(再生)ですね。ある日、廃車同然の車を5万円で購入して、自らピカピカにして楽しんでいました。すると、その車を見た友人が一目で気に入ってしまい、どうしてもそれを譲ってほしいと。部品代を含めると30万円ほどのコストでしたが、その金額でも構わないと即決で買ってくれました。
これを当時の私としては、プラモデルをきれいに仕上げたら原価よりも高く買ってもらえたイメージです。しかも、次はもう少し高価なプラモデルを買うこともできると。すべては車への溺愛がきっかけと言えます。
「新しいおもちゃを手に入れたい。そんな気持ちで車を再生していた」と語る南原氏。
─遊びを追求したら、いつの間にかビジネスにたどり着いたということですね
まさにそんな感じでした。ただもうひとつ、遊びの延長からビジネスに大きく変化したきっかけがあります。それは海外で見た車の価格が、日本の半額だったのです。為替の影響があったとはいえ、輸入すれば確実にビジネスになると思いました。
私は今でこそ様々な事業をしているイメージですが、元々は自動車一筋なんです。それはもう、人が言う好きのレベルを超えて、本気で並行輸入にのめり込んでいました。結果、輸入車業界では弊社を知らない人は潜りと言われるほどの規模に成長できたのです。
バッキンガム宮殿から招待状が届くまでの企業に成長
─英国大使館からVVIP(Very Very Important Person)の待遇を受けていたとお聞きしました
おっしゃる通り、英国車のインポーターとして厚遇をいただいていました。また、故エリザベス女王からバッキンガム宮殿にお招きいただいたことがあります。これは余談ですが、VVIP扱いの人は英国大使館に直接フェラーリで乗り入れることができるんです。
─車好きからたどり着いたという、非常に夢のあるストーリーですね
始めたころはレストアした車を友人に販売し、その売り上げを空き缶に入れて生活するようなお兄ちゃんでした。そんな、好きが高じて車いじりをしていたら、女王陛下に呼ばれるなんて人生は面白いものですね。もちろん、バブル真っただ中のタイミングでしたので、時代も後押ししてくれました。
単なる車好きで終わらせなかったことが人生を作った
─改めて、並行輸入ビジネスを手がけてよかったと思われますか
それは間違いありません。好きなことでお金を稼げたし、苦労や面倒も好きだからこそ乗り越えられたと思います。単なる車好きで終わらせなかったからこそ、ビジネスのヒントも生まれるわけじゃないですか。振り返ると、四六時中とにかく車しか頭になかったし、ずっと手を動かしていましたから。側から見れば、ただの車バカにしか見えないかもしれませんが(笑)。
「好きだからこそ飽きることなく続けられ、どんな苦労も乗り越えられる。稼げるだけで始めていたらとっくに辞めていたと思う」
─これからビジネスを考えている人にメッセージがあればお願いします
どんなことでも「好き」を突き詰めると人より得意になるし、さらには仕事になることもあります。一方で、好きなことで生きていけるなんて、簡単にできるものではないかもしれません。そういう意味でも、好きなことがあるなら本気で追求してみるのも良いと思います。
南原会長は、車の並行輸入ビジネスを最盛期には年商100億円まで成長させた。そんな氏が起業したきっかけは「好き」を誰よりも追求した結果と語った。特損100億から組織を再生できたのも、「本当にやりたいことで成功する」の信念が実現させている。
会社名 | 株式会社LUFTホールディングス(英語表記:LUFT HOLDINGS inc.) 旧社名)オートトレーディングルフトジャパン株式会社 |
住所 | 東京 :東京都港区西新橋1-5-9 ル・グラシエルBLDG.70 2階 名古屋:愛知県名古屋市東区東桜2-3-7 東カン名古屋キャステール 1階 |
代表 | 南原竜樹 |
設立 | 1988年2月12日 |
Web | https://www.luft-hd.co.jp/ |