留学中によく食べていたサンドイッチやハンバーガー。あの文化や味や街が帰国後も忘れられず、恋人に恋焦がれるような想いでFUNGOをつくった。賃貸契約の前日に資金がショートしても、諦めるという選択肢は微塵もなかった。
サンドイッチやハンバーガー、アップルパイ専門店を手がけ、コンビニや有名銘菓とのコラボ商品など次々に実現。多数のメディアから注目を浴び続ける株式会社ファンゴー。楽しくいこう!の「Going to be fun!」の理念を掲げ、飲食ビジネス最前線で戦う関俊一郎氏の原点を深掘りした。
アメリカのカルチャーに憧れて留学を決意
─関さんの簡単な生い立ちからお聞きしてもよろしいでしょうか
長野の諏訪出身です。諏訪の高校を卒業後はアメリカへ行き、カリフォルニア大学バークレイ校を卒業しました。
─なぜアメリカの大学へ行こうと思われたのでしょうか
アメリカへの純粋な憧れもありましたが、当時とても影響を受けた本があったんです。東大の経済学者だった西部邁(にしべすすむ)さんが、UCバークレーに移住したのちに社会問題の本を次々に書いていて。人種問題に始まり、ナショナリティや貧困問題、犯罪やホームレスを含めた治安についてなど、高校生の私にとって非常に興味深い内容でした。さらに、決して日本では触れることのできない新しい観点が多かったんですね。
また、高校時代に和太鼓をしていたことで、全国を遠征で回ることが多かったんです。ときには海外への遠征もあり、ニューヨークやカナダにも行く機会に恵まれました。当時は16歳前後だったと思いますが、やはりアメリカは夢のような世界だったし、常に渡米への憧れはありました。
営業力を身につけるためにコンサル会社へ就職
─カリフォルニア大学を卒業後、起業を考えたきっかけをお聞かせください
在学中にいろいろ思うところがあり、日本に戻らず現地で就職活動をしてました。当時はバブル崩壊の直後で仕事には困らなかったですし、上場企業からも多くの内定をもらいました。しかし、最終的に入社したのは小規模のビジネスコンサルファームだったんです。
「 留学時には詐欺にもあった。良いことも悪いことも含め、たくさんの経験ができましたね」
─なぜ大手企業ではなく小規模企業を選んだのでしょうか
理由は2つあります。まず、大手企業の先輩から「大企業に入ったからといって社長になれるわけではない」と言われたんです。当然ではあるのですが、妙にその言葉が印象に残っていたし、起業へのキャリアとして大企業である必要はないんだなと。では、自分に足りないものとして浮かんだもの。それが営業力だったんです。
そこで、さっそく私はコンサルティング会社を選んだんです。コンサル業というのは物を売る事業ではなく、いわゆる無形の商品を取り扱うビジネス。これは営業力を鍛えるには、いちばん良いジャンルだと判断しました。また、一般的には苦手なことは諦めることもひとつですが、私は無いものは身につけたい気持ちが強かったんだと思います。
日本にはない留学時代のサンドイッチを食べたかった
─最初に手がけた店舗が三宿のFUNGOです。なぜサンドイッチとハンバーガーを選んだのでしょうか
留学していた当時、私がいたバークレー校の前を通るバンクロフト・ウェイに、たくさんのカフェが並んでいました。いまの日本で言うスタバのような、イタリアンエスプレッソを出すカフェですね。朝はホットカフェラテとデニッシュを買い、ランチは圧倒的にサンドイッチを食べていました。それが現在のFUNGOに繋がったんです。
その後、帰国してコンサルティング会社に入社したわけですが、ふとしたタイミングで当時のサンドウィッチやハンバーガーを食べたくなる。あの独特のアメリカらしい空間を懐かしく思うも、当時の日本にはその雰囲気のお店がありません。そこでふと思ったんですね。自分で始めれば良いんだと。
─起業を決めてから、FUNGOの開業までは順調に進みましたか
資金集めにかなり苦労しました。退社後は銀行を回ったり、親に保証人になってもらったりと忙しかったです。自身が就職していた2年で貯めた分もありましたが、すべて開業資金で使い果たしました。
店舗を契約する前日に資金がショート
─物件の契約時に大きなトラブルがあったそうですね
いよいよ保証金や礼金などを振り込む前日に、なんと資金が50万円も足りなかったんです。そこで私は何をしたのかというと、目をつけたのは母が所有する彫刻でした。母に確認したところ、お金はないが彫刻は売っていいと言ってくれたので、親戚に50万円で営業に向かいました。この時は、まさに営業力を鍛えた成果を感じた瞬間ですね(笑)。結果、親戚が彫刻を買ってくれたおかげで、翌日の振込も間に合いました。
「やりたいと思ったら必ず実現したいので、契約のピンチも諦めるという感情はありませんでした」と話す関氏
─最後に、夢を実現するために関さんが大切にしていることをお聞かせください
叶えたいのであれば、簡単には諦めないこと。例えば、ある物件に出会ったときに、余計なことを言う人がいたんですね。駅から遠いとか、日が当たらないなど文句ばかり。ところが私は思うんですね。目の前が公園なんだから、お客さんがワンちゃんを連れてこれる良い場所でしょと。他人の意見は参考にしても、最終的には自分を信じることが重要です。
─留学時に通っていたカフェが忘れられず、FUNGOをオープンした関氏。夢はどんなことをしてでも叶えること、諦めない心が原点になっていると語ってくれました。関さん、力強いメッセージをありがとうございました。
会社名 | 株式会社 ファンゴー |
住所 | 東京都世田谷区三軒茶屋1-18-11 1F |
代表 | 関 俊一郎 |
設立 | 1995年12月 |
Web | https://www.fungo.com/m_top.html |