ビジネス書や世間で語られる成功を追いかけるだけが人生ではない。自分が本当にやりたいことができていれば、収入や肩書きに関係なく、それこそがあなたの成功である。
独学でイタリア料理を学んだのち、北海道江別市に「リストランテ薫」をオープン。ミシュランガイド北海道にて1つ星を獲得し、2018年には自身の名を冠した「長谷川稔」を東京広尾にオープン。その後も数々の賞を総なめにし、常に新たな挑戦をし続ける株式会社KAORU、長谷川稔氏に経営者としての原点を聞いた。
勉強よりも学んでおいて良かったと思うことがある
─学生時代の経験で、現在にも活かされていることがあればお聞かせください
現在では失われているとされた縦社会ですね。学生だった頃は心から嫌でしたけど、社会に出てから本当に役に立っています。礼儀礼節を持って他人と接する姿勢は、ある意味で学力よりも必要だと思うんです。先輩はもちろん、後輩であっても時には敬語は必要ですし、配慮や我慢ができないと人間関係も限られてしまいます。これは経営者でも一社会人としても何ら変わりません。
誰もがスーパースターになれるわけではない
─現在は、大学1年生からインターンシップに参加するほど就職活動が活発になっています。これから社会に出る人たちにメッセージがあればお願いします
まず私は、誰もが大物経営者になったり、スーパースターになったりできるとは思っていません。ビジネス書にありがちな「成功するためには」のようなメッセージがありますが、全員ができるわけではない。特に、私なんかはそれを見たところで「それは無理だわ」と思うタイプですし(笑)。
─「多くの人」という視点では現実的に難しいということですね
例えば、夢を諦めるのもひとつの選択として大切だと思うんです。もちろん夢を持つのは大切だし、とても素晴らしいことなんですけど、全員がトップになるとか大金持ちになるなんて現実的ではありません。残酷だけど、がんばったところで誰もがこんな場所(取材場所の高級マンション)に住めるわけではないですから。
それと、社会では突き抜けた人だけが注目されがちですが、その成功者だって多くの人に支えられていますよね。だったら意中の経営者の下でがんばることだって、素晴らしい夢だと思うんです。さらに、家族や友人を大切にしているなら、ビジネスだけの成功者より立派だと思いませんか?と私はみなさんに言いたいですね。
「世間の言う夢を諦めることこそ、本当の夢を叶えるための選択肢だと思ったほうがいい」
─世間のものさしではなく、自分の人生における成功を考えたほうがいいと
おっしゃる通りで、どんなに努力してもできないことはできないんです。世間の基準に振り回されるより、自分なりの価値観を持つことのほうが遥かに素晴らしい。それと、諦めることは決して後ろ向きではなく、別の道が拓けることにも繋がるんです。狭い視野に振り回されてチャンスを逃すほうがもったいないですから。
諦めるという言葉が嫌なら「変える」というイメージでいいと思います。私で言えば、「学歴もスキルもないから料理人か美容師ならできるかな」という感じで考えまくっていました。その結果、経営者にいちばん近いと判断した道が私の場合は料理だっただけ。大切なことは、やりたいことを考えると同時に、できることも考えてほしいということです。
他人が定義した成功に振り回されるのは、限られた人生がもったいないこともあると長谷川氏は話した。「本当に叶えたい夢に目を向けることがいちばんの近道」というメッセージは、多くの社会人の指標になるだろう。
会社名 | 株式会社KAORU |
住所 | 東京都港区南麻布4‐5‐66 |
代表 | 長谷川 稔 |
設立 | 2017年09月 |