株式会社Parasol|伊藤 早紀

準備や計画よりも先に動き出し、起こる課題やトラブルは動きながら改善した。まずは顧客のMVPを達成し、理想的なサービスを形にする。

2017年に株式会社Parasol創業メンバーとして入社。マッチングアプリメディア「マッチアップ」の編集長と未婚男女のマーケティング機関「恋愛婚活ラボ」の所長を兼任。2021年にはParasolの運営するパーソナライズ婚活サービス「ヒトオシ」を立ち上げ、マッチングアプリ業界に参入。現在、右肩上がりに拡大中の事業を牽引する伊藤早紀氏に経営者としての裏側を聞いた。

無料で始めたマッチングサービス「ヒトオシ」

─マッチングサービスの「ヒトオシ」を立ち上げた経緯をお聞かせください

元々マッチングアプリのメディアを運営したり、結婚相談所の運営も行っていたのですが、ユーザーが自分自身でお相手を探して連絡とってメッセージをして…という婚活に限界を感じており、なにか自社で婚活サービスをやってみたいという気持ちがありました。
オンラインの婚活サービスなどはいくつか構想があったのですが、そんな中でコロナ禍に突入し、オンラインで人と会うことが当たり前の世の中になり、間に人が介在してオンラインデートをセッティングするヒトオシのモデルが時代にもフィットすると思い、立ち上げを決めました。

最初は2020年に私が100人ほど面談をして、お見合いをやってみました。まずは無料での利用を呼びかけたところ、約200人からの申し込みがあったのです。ただ、マッチングアプリのように顔が見えるわけではないので、当初は応募なんて来るのかなと。ところが、結果的にはニーズを感じる人数が集まったため、手探りの中で進めていきました。

私が面談を行なった後にオンラインでお見合いするのですが、当初は今と比べたらクオリティとして満足できるものではありませんでした。それでも20%前後はカップルが成立していたんです。会社としては婚相談所なんかもやってみたりもしましたが、人を直接面談からマッチングさせた経験はありませんでした。それでも「ヒトオシ」の仕組みであればニーズもあるし、事業にできるという手応えを感じて2021年に有料化しました。

走りながら分析と改善を繰り返した

─ゼロイチに向けての準備が多かったかと思います。どのようなことを意識してスタートしたのでしょうか?

やるべきことは多かったはずですが、私は良くも悪くも先に走り出してしまう性格。ですから、ヒトオシも思いつきで動いたというのが正直なところなんです。まず動いてから、「どうしよう」や「まずいかな」など、分析と改善を同時に行なっていたと思います。私1人で100人を面談して、実際に全員のお見合いまでは2ヶ月ぐらいかかりましたが、結果的にお付き合いや成婚に繋がったので、ニーズがあるだけではなく、しっかり価値を生み出せることも確信できました。

「良くも悪くも先に走り出してしまう性格。トラブルや課題は動きながら改善していた」

─人材も事前に用意せずスタートしてしまった?

初めは事務局も置かず、日程の調整は仲人さん(現マッチングプランナー)に依頼するつもりでしたが、年配の女性でパソコンができない方が多かった。そこで急遽、プランナー業務のみを依頼して、事務局は切り離して私が運営していたんです。ただ、現実には私のキャパが限界を超えてしまい、友人など様々な人に手伝っていただきました。また、当時は契約プランや起算日もなかったので、ローンチから3ヶ月は常にプランナーと共に手探りで走っていました。時に意見がぶつかることもありましたが、都度擦り合わせながら一緒に頑張りました。

結果的にはMVPの達成にたどり着けば良い

─計画や、予定通りに進まなくても不安はなかった?

私自身、実は作業が煩雑になってもあまり気にならない性格なんだと思います。また、私はサービス立ち上げで大事なことはMVP(Minimum Viable Product=顧客に価値を提供する最小限のプロダクト)だと思っているので、開発や細かい設計などはせずに、既存のスプレッドシートなどのツールを使ってまずはプランナーが選んだユーザー同士をお見合いをさせることに集中していました。その後、お客様からのフィードバックをもとにアプリ開発を行なったのですが、それで良かったと思っています。

─スケールの道筋を想定せずに進めていたということですか

しっかりとは描いてなかったですね(笑)。toCサービスをするのは初めてのことで、わからないことが多かったですし密に計画すると時間がかかってしまう。それに、こんなにニーズもあってユーザーから喜んでもらっているサービスが、うまくいかないわけないだろう、という謎の自信がありました。とにかくサービスを良いものにするために動くことを最優先にしていました。もちろん経営者としては良くないのかもしれませんが、私はとにかくより多くの人がカップルになるサービスを作ることだけに集中し、お金や重要な箇所は傘(現:代表取締役会長 傘勇一郎氏)がシビアに管理していました。また、Salesforceの導入を行なってくれた清水は、現在もParasolに在籍してくれています。ですから、ヒトオシのリリースから2年は実質ふたりで運営していました。

会員や社員を守るフェーズに突入したこれから

─ひとりで背負う重圧のプレッシャーや不安は感じなかった?

プレッシャーは無いです(笑)。おそらく、私の気質的に感情のある部分が抜け落ちているんだと思います。しかも、思考もポジティブというか楽観的で、恐怖感や不安を感じないんです。ヒトオシについても、一時期伸び悩んでいた頃はからクローズした方がいいのではないか、という話があったこともありましたが「これだけカップルが誕生しているし、絶対大丈夫、あと2、3ヶ月で変わってくるはず」と思っていました。現場を見てそう感じた見立て通り、ヒトオシの業績はそれから右肩上がりになって行きました。組織のトップとしては社員も増え、その生活も担保しなくてはいけないので、今はまた違ったフェーズに入っているなと感じます。

「不安やプレッシャーを感じない性格。サービス終了の危機にも動じなかった」と話す伊藤社長。

─リリースから一定の形になって、次のフェーズで考えていることもありますか

現在ではアプリなど受託開発も始まっているため社員も増えてきています。まだ、数字面では大変な時期もありますが、それでもサービスの質を維持するためにはマンパワーが欠かせません。すでに会員もプランナーも増加し、かつては可能だった意見や苦情への対応も、私では把握できない規模になってきています。ですから、各所に必要な人材を配置して、サービスやマネジメントを構築していくフェーズに入ったんだと感じています。

感覚に頼ったゼロイチで戦略は二の次だったと語った伊藤氏。しかし実際には傘氏との両軸が現在のヒトオシのPMFに繋がっており、絶妙なバランスで回っていると言える。

会社名株式会社 Parasol /Parasol Inc.
住所東京都港区芝公園4-6-8 bijin-BLDG. 3F
代表伊藤 早紀
設立2017年1月23日
Webhttps://match-app.jp/company/
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