スタンフォード在学中にGoogleの元社長エリックシュミットの講義を受け、沸々と湧き上がってきた起業への想い。日本に眠っている素晴らしい宝を掘り起こし、世界中にMade in Japanを広めていくことが自分の使命。
慶応大学卒業後はインディアナ大学院に入学、UBS証券で3年間ファイナンスを学んだのちスタンフォード大学経営大学院に留学。GoogleやYouTubeをはじめとする、様々なジャンルで世界一となった経営者からのアドバイスを受け、Made in Japan眼鏡ブランド、オーマイグラスは誕生した。率いるのは清川忠康氏。華々しい経歴をもつ経営者の原点を紐解いた。
自分というものがなく、人が凄いと思うものを追い求めていた
─聞きたいことがたくさんありますが、まずは清川さんが育った環境をお聞かせください
父は経営者で、母が専業主婦の家庭でした。私は人付き合いが苦手というか、小学生のころから人に忖度できない性格だったんです。それがたとえ自分より強い相手でも、感情をそのままぶつけて喧嘩するような子どもでした。その後、中学校は進学校で勉強漬けの3年間を過ごしました。特に親から強制されたわけでもなく、勉強すれば選択肢が増えるというか、自由になれると思っていたんですね。その甲斐もあって慶応大学付属高等学校に合格し、入学後も成績は上位でした。
─子どものころから将来のことを考えて努力されてのは親御さんの影響でしょうか
父がよく「鶏口となるも牛後となるなかれ」と言っていたのを覚えています。これは、大きな組織で誰かの指示を受けるより、小さな組織であっても指示をする立場のほうが良いという故事の教えです。父自身が経営者でしたから、いずれお前も自分の組織を持てというメッセージだったのかもしれません。
スタンフォードにしかない空気感が自分を起業家に導いた
─慶応を選ばれた理由は、将来的な経営者としての繋がりや実績を見据えた選択だったのでしょうか
いえ、昔の私は自分の価値基準がなく、一般的に世間で凄いとされるものを追い求めていました。大げさに言えば、スタンフォード大学への留学も同じで、東大よりも遥かに凄い大学に行きたかっただけなんです。ところが、実際に入ってみると全員が優秀だし、クオリティの高い授業など、これまでになかった世界を経験ができました。
この経験のおかげで、大切なことは世間なんてどうでもよく、自分が本当にしたいことをすべきだと再確認したんです。そのひとつが、子どもの頃から漠然と浮かんでいた起業でした。スタンフォードでは、Googleの元社長や世界的な経営者たちが次々に講義をしてくれます。さらには一緒にランチで過ごした交流も刺激となって、起業に対する想いがより強くなったのです。また、在学中に東日本大震災に見舞われたことで、「人生は短い。自分の思うように生きていこう」と感じました。
「スタンフォード大学院へ行ったときはまだ自分の人生がイメージできていなかった」
─起業家予備軍にとってはなんとも贅沢な時間ですね。では、なぜITではなくメガネブランドだったのでしょうか
なにを始めようかと考えた末、残ったビジネス候補はメガネとマッチングアプリでした。というのも、日本でマッチングアプリが始まったのは2015年ですが、アメリカでは私が在学中の2011年にはその流れが始まっていたんです。そこで、1年生と2年生の間の夏休みはマッチングアプリのスタートアップへの参画も経験しました。
メイドインジャパンのクオリティを世界の人に届けたい
─最終的にメガネブランドで勝負しようと思ったのはなぜでしょうか
インターンとして参画してわかったのですが、マッチングアプリはエンジニアリングが肝なんですね。私自身が得意な領域ではないので、構造上やりきれないというか、競争優位性を保てる自信がありませんでした。一方で、メガネは産業構造をみてもオペレーションが重要になるビジネスです。オペレーションの構築が核であれば、前職のコンサルやファイナンスの経験も大きな強みになると思いました。
さらにもうひとつ理由があります。私は二度の留学によって4年ほど国外の暮らしを経験し、日本の良さに改めて気づきました。日本のモノづくりのクオリティは本当に素晴らしく、日本のプロダクトを海外で広めるビジネスがしたいなと。そこで、爆発的に市場が拡大し始めたECに注目し、メガネのオンライン販売をはじめました。創業の2011年から4年はオンラインのみで、リアル店舗をはじめたのは2015年からです。
あまり先のことは考えていない。まずはアジアナンバーワンを目指す
─最後に、今後のオーマイグラスはどのような展開を予定しているのでしょう
おかげさまで、現在(2023年6月時点)はオンラインに加え、17の実店舗を出店することができました。国内もまだ出店余地はありますが、今後は海外での展開も考えています。というのも、弊社は決して安価ではないので、JAPANブランドとはいえ欧米で通用するか未知数なんです。そこで、まずは高単価のアイウェア市場として、アジアナンバーワンになってから次の展開を考えれば良いと思います。店舗数も売り上げも重要ですが、何より私やスタッフたちが楽しめる活動を続けていきます。
「ハイクオリティなオーマイグラスは必ずアジアで勝ち抜ける」と話す清川氏。
清川氏への取材を通して感じたのは、常人では手の届かない次元の結果を残しつつも、その人柄には一切の驕りがなかった。また、客観的に自分の立ち位置を把握して、確実にビジネスへと落とし込む。その計画性と戦略性こそがオーマイグラスの強みなのかもしれない。アジアナンバーワンを実現後も、淡々と次の目標へ歩む氏の未来が想像できた。
会社名 | オーマイグラス株式会社 (英文表記:Oh My Glasses Inc.) |
住所 | 東京都港区芝3-17-15 クリエート三田 307 |
代表 | 清川 忠康 |
設立 | 2011年7月15日 |
Web | https://www.ohmyglasses.co.jp/ |