株式会社アローズ|二谷 誠

流されて生きていくと、自分の力では行けなかった場所にたどり着くこともある。やりたいことがなくても焦らなくていい。金なし、才能なし、学歴なし、夢なしでもたどり着ける場所がある。

従業員が1000人を超えながらも、オフィスすら持たない謎の企業、株式会社アローズ。グループ会社が50社を超えた現在も勢いは衰えず、1万人の社長を輩出したいと淡々と語る代表の二谷氏。高学歴かつ大手出身かと思えばまったく逆の経歴をもつ同氏。経営者を形作った原点に迫った。

なにをやってもうまくいかなかった学生時代

─学生時代に力を入れたことはありますか

実は、ほぼ何もないんです(笑)。小学校の時には野球をやっていましたが、一度もレギュラーにはなれませんでした。ただ、特に悔しいという思いもなく、野球の才能がないんだろうという程度ですね。そして、中学校ではスラムダンクに触発されてバスケ部に入ったんですけど、そこでも結果がでずに1年で辞めてしまいました。さらに、陸上部で2年間くらいやっても大した成績は出せなかったですね。

高校に入った頃はJリーグに影響されてサッカー部に入ったんですが、結局は3年間ずっと補欠でした。とりあえず流行りには乗っかってみるけど、本当にやりたいことではないので本気で練習しないんですね。本気で練習をしないからうまくなるはずもない。ずっと結果が出なかったのは、どれも本気になれなかったことが要因だと思います。

─二谷さんの現在の実績とギャップがすごくあります。学生の頃から今に至るまで、二谷さんをつくったものはなんだったのでしょうか

学生時代は部活をしながらも、大好きなヒップホップにハマって友達と遊んでのびのびと暮らしていました。ただ、親からはいろいろ言われつつも抑圧はされなかったんで、穏やかな性格になったのかもしれません。

現代のように、子供のころから遊ばず受験勉強して夢や目標に向かうのも良いと思いますが、私にはそれが無理。ただ目の前の楽しいことをするだけの学生時代でした。ただ、社会に出てから基礎学力の大切さを知り、英語も含めてもっと勉強しておけば良かったなと今では思います。ですから、学生の頃に自己犠牲をしてまで努力できる人って本当に凄いなと思います。

20代で身につけたサバイバル力

─高校卒業からは何をされたのでしょうか

高校卒業するまでは京都の舞鶴にいて、みんな大学受験か就職していく中で、私は受験も就職活動もせず、京都市内の繁華街で夜のバイトをしていました。将来のことを何も考えず、とりあえず稼ごうかなという感じでした。そんなときに父親から「これからどうするの?」と言われ、何も答えられなかった私に見かねて「ワーキングホリデー行ってみたら?」と提案してくれたんです。特に目標もなかったですし、なんとなく面白そうだったので早速オーストラリアへ行きました。

当時はお金もコネも仕事も住むところもなかったので、電柱に貼ってある怪しいチラシに連絡して家を探したり、見知らぬ人に「ギブミージョブ」と言って仕事を探したりしていました。家や仕事がなければ、待っているのは「死」なので、恥ずかしいなんて言ってる場合ではないんです。むしろ、何もない自分でも自ら声をかけるだけでフルーツピッキングの仕事を紹介されたことに達成感がありました。

「渡豪したときの自分は実績も力もなかったのでとにかく動くしかなかった」

─勇気があるとかないとかの問題ではないんですね(笑)

そうなんです。孫正義さんが渡米する際、学校から休学を提案されたにも関わらず、自主退学を選んだ話に近いと思います。人間は弱い生き物ですから、帰れる場所があればそこに甘えが出てしまうんです。退路を断ってこそ覚悟が決まる。もし、あのとき私にお金も宿もあったら英語を学ぼうとしなかったはずですし、必死で仕事を探そうとしなかったと思います。

─日本にいるとその類の危機感はないですよね

まさにその通りで、日本でも未来のことを考えて必死になれる人は本当に凄いと思います。不安も危機感もなかった自分にはまったく無理でした(笑)。そこから5年間、いろいろな国で暮らしながら経験を積んで、24歳の頃に日本に帰ってきました。

「ビジネスで一番重要なのはサバイバル能力です」

この海外生活で学んだのは、まず自分ひとりで生きていくサバイバル能力。さらに、日本から出るまで気づけなかった日本の本当の素晴らしさです。ただ、これは私が口で説明しても行ってみなければ実感は湧かないと思います。ですから夢や希望がなく、時間だけはあるという人は是非トライして欲しいです。特に20代の早いうちに、サバイバル能力を身につけると怖いものがなくなりますよ。

言われてみれば、経営者にとっては「サバイバル力」こそ最も大切な力かもしれない。お金が尽きても、人が辞めても、事業が立ち行かなくなっても、サバイバル力さえあれば何度でも立ち上がれるはずだ。

会社名株式会社アローズ
住所東京都新宿区西新宿1-26-2 新宿野村ビル32階
代表二谷 誠
SHARE
  • URLをコピーしました!