メディカルローグ株式会社|野口 宏人

日本の医療は大きな進化を遂げたが、現場ではまだ多くの課題を抱えている。医師のアイディアを形にし、医学研究をデジタル化することで、医療の未来を大きく変える。

ベンチャーながらも慶應義塾大学病院や順天堂大学医学部附属順天堂医院など、日本中の大学病院とネットワークを持つメディカルローグ株式会社。アプリの総開発数は40に達し、口コミでさらに広がり続けている。代表は野口宏人氏。彼は一体何者なのか。大学病院との強固なネットワークをもつ賢者の原点に迫る。

大学生時代の学生店長で掴んだ自信

─まずは、野口さんの原点ということで学生時代の話をお聞かせください

学生の頃は、特に打ち込んだものはなかったですが、アルバイトにはかなりの時間を割いてました。というのも、家庭の事情で大学の学費を自分で稼ぐ必要があったんですね。毎日のように夕方からは居酒屋で働き、深夜はレンタルビデオ店員を掛け持ちして、年末年始などの長期休みは短期バイトもしていました。

─プライベートの少ない大学生活で、良かったことや役に立った経験はありましたか

アルバイト先の居酒屋で、学生店長を経験させてもらいました。しかも、ちょっとしたバイトリーダーではなく、割としっかりしたオペレーションを行うということで。経費や在庫を自ら調整し、目標の売り上げを出さなければいけなかったんです。さらに、後輩の教育からスタッフの配置やシフト管理まで、いま思えば学生がやる範囲なのかとも思いますが(笑)。ただ、学生の私にとっては大きな自信に繋がった経験でした。

人選を誤って失敗に終わった最初の事業

─社会人となった野口さんが起業に至ったのはどのような理由からでしょうか

最初の起業は単なる勢いです(笑)。前職の医療機器メーカーを1年後に辞めると決めて、焦らずのんびり転職先を探していました。ただ、その時点でライバル企業にだけは転職しないと決めていて。というのも扱っていた製品が素晴らしく、他社製品を勧める気にはなれませんでした。もうひとつは、同僚たちとライバル関係になるのも避けたかったですし。また、医療業界はライバル企業を転々とする文化があったんですが、周りと同じ道は辿りたくないと思っていました。

「起業のきっかけは、自分にもできそうというだけで深い理由はなかった(笑)」と話す野口CEO。

─医療関連アプリ以前に別事業を手がけたことがあるそうですね

ある日、起業している友人たちと食事をした際、2人とも苦労話を笑いながら話すんですね。彼らの話を聞いて、確かに大変そうだとは思いながらも、より起業に興味を持ちました。そんなタイミングで、ヘッドハンターから引き抜きの話がきたんです。ただ、私は1年後には起業を決めていたので、「転職しても長期間は働けない」と伝えたところ、なぜか共同でビジネスを始めようと誘ってきたのです。

─不思議な流れですね(笑)どのような話をされたのでしょうか

ヘッドハンターである彼は中国人で、中国には日本の病院で治療を受けたい人がたくさんいると説明してきました。しかし彼には日本の病院と繋がりがなく、君にはそのネットワークがあるよねと。私には、前職で繋がった大学病院とのネットワークがあったので、一緒に医療ツーリズム事業を立ち上げようと言うのです。そこで早速、登記を済ませて順天堂大学医学部附属順天堂医院や徳洲会などの大病院を通し、万全の受け入れ体制を整えました。

ところが、どれだけ待っても中国からの観光客が1人も来ませんでした。大病院の理事の方たちにご協力いただいたにも関わらず、失敗という結果に終わりました。100%私の落ち度ですが、話だけで人と組んではいけない教訓として現在にも活かしています。

アプリの利用がもたらした医学研究への効果

─現在は医療分野のデジタル化を手がけられています。具体的なメリットがあればお聞かせください

インフルエンザの研究を例にあげてご説明します。ある年の資料を見ると、25の施設で4700名ほど(1施設あたり188人)のデータを取得していました。一方で、弊社のアプリを利用したところ、たったの1施設から10,000名の被験者データを取得できたのです。これは、医療のデジタル化によって、省力でも大規模な研究が可能であるという実例です。

─そこまで野口さんを医療の発展に突き動かすのはなぜでしょうか

いちばんは前職の医療機器メーカー時代が関係しています。当時、私の仕事はまだメジャーではない治療法を普及させていく仕事でした。ある治療法を例にあげると、それは非常に効果的にも関わらず、患者数に売り上げが比例していませんでした。ところが、医師たちには「こうすれば多くの人に浸透する」というアイディアはあったものの、業務に追われて具現化できないだけだったのです。そこで私たちが医師をサポートしながら普及に努めた結果、売り上げを30倍に伸ばすことができました。これは単なる売り上げ増ではなく、同時に救われる患者さんも増えたということになります。

「医学研究のデジタル化は、効率化を図ると同時に日本の医療を大きく進化させることになる」

─医療の発展は、結果的に救われる患者が多くなることにも繋がると

その通りです。これまで日本の医療は様々な研究によって進化してきました。しかし、現状はまだ属人的だったり、業務が手作業だったりなど、改善できる課題が山積みの状態です。その、アナログ的な医療分野をデジタル化をすることで、より医療の発展に貢献できると確信しています。また、それは医師だけでなく、患者さんにも同様のメリットをもたらします。これが私の経営者としての原点です。

医学研究のデジタル化は医師や医療機関に貢献できるということは、同時に治療を受ける患者にとっても明るい未来に繋がると野口CEOは語った。今後のメディカルローグに注目したい。

会社名メディカルローグ株式会社
住所東京都港区元赤坂1丁目7番18号 メットライフ元赤坂イースト107
代表野口 宏人
設立2015年5月18日
Webhttps://m-d-l.co.jp/
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