株式会社ベイジ|代表取締役 枌谷力

従来の仕組みやルールに馴染める自信がなく、自分の居場所は自ら作るしかないと思い、起業した。Web制作会社の枠に囚われず、尊敬される会社を目指す

本気でデザインを愛し、Web制作事業で数々の結果を残す株式会社Baigie(ベイジ)の枌谷力(そぎたにつとむ)CEO。現在はWeb制作に加え、マーケティング、コンテンツ、組織デザインなど、幅広いテーマで精力的に活動する枌谷氏に、起業の原点と15年目に挑む新たなビジョンをお聞きした。

インターネットとの出会いが人生を開花させた

─まずは、枌谷さんの幼少期や学生時代のことをお聞かせください

子どもの頃から漫画やアニメが好きで、絵を描くのが得意でしたね。勉強もそれなりに得意で、中学時代は学年でトップクラスだった時期もあります。ただ、それまでせっかく良かった成績も、高校受験ですっかり燃え尽きてしまった(笑)。無事に合格はしましたが、偏差値は30台まで落ちてしまい、成績も学年510人の中で常に500位以下でした。

─そこまで成績が落ちたにもかかわらず、枌谷さんは大学に進学されてますよね

一浪はしましたが、元から勉強が嫌いだったわけではないので、偏差値を65まで戻すことができたんですね。とはいえ大学ではサークルに入ってないし、深く繋がるような友だちもいませんでした。在学中に遊ぶ仲間はいましたけど、卒業を機に自然と疎遠になってしまう。そういう意味では大学生活もあまり楽しかったとは言えないですね。

─枌谷さんはもともと人と深く関わらないタイプなのでしょうか

若い頃はプライドが高いというか、割と自意識過剰だったんです。本心では人と深い関係になりたいと思っているのに、人との距離感をどう取れば良いのかよくわからない。そういう意味で、インターネットは自分にとって心地良い環境だったんです。1990年代に初めてインターネットに触れ、当時は音楽サイトを運営していました。そこには“音楽”という共通項で人が集うので、年齢や性別に関係なくコミュニケーションできる。私の人生はインターネットによって明るくなったとも言えるかもしれません。

働きながらデザインを学び、Webデザイナーに転身

─確かにインターネットの登場は経済や流通を根底から覆しました。枌谷さんはいつ頃から起業を意識されたのでしょうか

新卒でNTTデータに入社し、2年目には起業を意識しましたが、具体的な事業は決まっていませんでした。せっかくなら自分が関心を持てることが良いと思い、デザインの会社を作りたいなと。その頃からWebデザインとグラフィックを学ぶために、土日にスクールへ通い始めたんですね。2年後には作品も40点ほどになり、28歳で未経験のデザイナーとして転職しました。

「当時のWebデザイナーは薄給と言われてましたが、自分の人生を変えたいと思っていたので、報酬や生活の安定より、とにかくデザイナーになることを目指していました」

─子どもの頃から絵が得意だった枌谷さんとしては、本気で挑戦できる仕事に出逢えたわけですね

おっしゃる通りなんですが、なかなか思うようにはいきませんでした。自社のWeb制作チームを作りたいという会社に採用されたのですが、いざ入社したらWeb担当は私だけ(笑)。当時はWebメディアが黎明期なこともあり、人材が完全に不足してたんですね。私は未経験者にもかかわらず、誰にも教われずに独学で業務をこなすだけ。さすがにこれでは起業できないと思い、キャリアを積むために体制の整ったWeb制作会社に転職しました。

自分らしく生きられる場を作るために起業した

─すでにNTTデータ時代から起業を想定していたとのことですが、きっかけはどういう理由だったのでしょうか

そもそものきっかけは、「既に存在する会社で、自分に合う会社を見つけるのは、至難の業」と思ったことでした。そこで、自分に合う職場環境は自ら作ったほうが早いと感じたんです。会社のルールや序列、仕組みが確立しているところに“自分のスタイル”を入れ込む余地はないし、それに合わせる器用さを持ち合わせていないという自覚もありました。

─既に仕組みが作られた企業ではなく、これから仕組みを作っていくベンチャーに入るのも一つの選択肢だと思うのですが

それも一理あると思います。ただ、私は若い頃に色々こじらせており、お金やビジネスのようなものに嫌悪感があったんです。その反動で、音楽やアートのようなものに自分を見出していたところもあります。経営者となった今ではそれが偏った考え方だと理解してますが、当時は“経済性のために働く自分や会社”のイメージに納得できなかった。だからといって、具体的にどの会社なら自分が満足するかも分からない。それなら自ら起業し、自分らしく生きられる会社を自分の手で作ろうと思いました。

Web制作の枠を超え、顧客の成功を共に考える会社へ

─仕事を楽しむ枌谷さんらしい視点ですね。では、最後に枌谷さんの今後のビジョンをお聞かせください

言える範囲にはなりますが、2027年までに“Web制作会社”という肩書を変えようと思っています。といってもこれまで通りWebサイトは作りますし、デジタルコンテンツによる顧客の支援もします。あくまでも、現在のBaigieを“Web制作会社”ではない肩書きにしたいんです。

─単なるWebサイト制作にとどまらず、より深いところで並走して支援する会社というニュアンスでしょうか

まさにおっしゃる通りです。コンテンツエージェンシーなのか、コンテンツコンサル会社なのか、肩書きはまだ決めかねてます。ただ、急激にやるとあまりうまくいかないので、今の社員たちと3年間で少しずつ変えていく計画です。

「単なるWeb制作の会社ではなく、顧客が成功するためのアドバイスや付随するサービスも提供する会社にしていきます」

─急激に変えるとうまくいかないという点を具体的にお聞きしてもよろしいでしょうか

いきなり肩書きを変えてしまうと、一時的には集客力が弱まることになります。例えば、サイトを作りたいお客様は一般的に“Web制作会社”で検索します。ということは、肩書きを変えたことで弊社にたどり着かないかもしれない。そこで、指名検索を含めた認知の獲得など、あらゆる下準備を進める必要がある。ですから、当面は定量的なビジョンより、社員たちとBaigieの変化に専念します。

当時の考えは固定観念とはいえ、旧態依然とした会社の在り方に疑問を感じていた─。それが正解か不正解かはともかく、枌谷氏の言葉からは本気でWebデザインに取り組む姿勢が伝わってきた。その結果が現在のBaigieであり、BtoBマーケティング、UXをはじめとする様々な領域での活躍につながっているのである。

会社名株式会社ベイジ
住所東京都世田谷区代田6-6-1 TOKYU REIT下北沢スクエア 3F
代表枌谷 力
設立2010年1月6日
Webhttps://baigie.me/company/
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