株式会社Yazawa Ventures|矢澤 麻里子

働くこと、仕事そのものがずっと好きだった。「女性は家庭に入るべき」という親の価値観と葛藤しつつも、やはり自らの表現は仕事だった。頑張る女性起業家と伴走し、マクロで輝く人生のお手伝いをしたい。

矢澤麻里子(やざわまりこ):神奈川県藤沢市出身。大妻女子大学在学中に訪れた海外に刺激を受け、ニューヨーク州立大学に編入。帰国後はソフトウエアベンダーにて、コンサルタント・エンジニアとして従事。複数の転職を経たのち、米国Plug and Play日本支社にCOOとして参画し、150社を超えるスタートアップを支援。2020年、自身の名を冠したYawzawa Venturesを創業。女性が圧倒的に少ないVC界で、頑張る女性起業家を支援する矢澤麻里子氏の原点を深掘りした。

1日3つのアルバイトを掛け持つほど仕事が好き

─矢澤さんの子ども時代や学生の頃についてお聞きしたいのですが、特に高校時代からはアルバイトに励んでいたそうですね

そうなんです。学校よりも、圧倒的に仕事に興味がありました(笑)。ファミレスのウエイトレスや、牛丼店、引越しセンター、警備員、コールセンターなど、職種も幅広かったですね。朝はガソリンスタンドで働き、10時ごろから学校へ行く。さらに、放課後は家庭教師をして、夜はマンガ喫茶という感じで、1日3件を掛け持つこともありました。また、パーツを買い揃えて自らPCを組むなど、あらゆることに興味を持つ学生だったと思います。

─仕事が好きとはいえ、かなりのバイタリティだと思います(笑)。大学へは進学されたのでしょうか

日本の大妻女子大学へ進学しました。その後、アルバイトで貯まったお金でイギリスへ行った際、初めての海外にとても興味を持ったんです。そこで猛勉強を開始し、2年生の途中でニューヨーク州立大学へ編入しました。

コンサルタント、エンジニアとしてキャリアをスタート

─卒業後のキャリアはどう考えていましたか

卒業後は、現地で起業の真似事をしてみました。日本語を学びたいアメリカ人と、日本人留学生をマッチングさせる。アニメ人気でアメリカ人には日本語のニーズがあり、日本人留学生はお小遣い稼ぎになりますよね。結果的には思うような収益化はできず、ビザの期限も迫っていました。留学生は、卒業から1年しか在留できないので、帰国してITコンサル会社に就職しました。

「仕事はどれも楽しかったのですが、“女性は家庭に入るべき”という親の価値観との折り合いに悩むことも多かったですね」と話す矢澤氏。

─帰国後はどのような仕事をされていたのでしょうか

最初は、toB向けのソフトウエアベンダーにコンサルタント、エンジニアとして入社しました。企業の信用調査やリスクマネジメント、与信管理のモデリングなどを経て、その後は海外の企業を調査・分析する起業へ転職。その頃からCPA(米国の公認会計士資格)の勉強も始めていました。ただ、CPAに必要な4科目のうち、2科目が合格した頃には、「別に会計士になりたいわけじゃないな」って(笑)。私としてはさらにビジネスを学びたいと感じていました。

試行錯誤の末にたどり着いたキャピタリスト

─ベンチャーキャピタルへのきっかけはなんですか?

元々、株式市場や投資ファンドには興味があったりました。当時交際中だった元夫がファンドに勤めていたこともあり、上場企業の株を売買することへの興味と、一方でそれが会社の本質的価値への繋がりになるのかも違和感もあり模索していましたが、ベンチャーキャピタルがベンチャーの頑張れる仕組みを後押しすることに気付いて、そこから素晴らしいベンチャーキャピタリストの方々を知ったことがきっかけです。なんとかベンチャーキャピタルに入りたいと動いていましたが、そのタイミングでアメリカのVCに声をかけてもらい、インターンとして働かせてもらったんです。結婚のために半年で帰国しましたが、それがキャリアとなってサムライインキュベートに入社。改めて、キャピタリストとしてのキャリアが本格的にスタートしました。

─かなり回り道というか、試行錯誤しながらキャピタリストの道にたどり着いたんですね

そうなんです。サムライインキュベートでは4年半ほどお世話になり、その後はVCかつアクセラレーター(スタートアップや起業家をサポートし、事業成長を促進するプログラム)でもある米国Plug and Playの日本支社の立ち上げに参画しました。

─Plug and PlayではCOOを勤められ、150社以上のスタートアップを支援されています

そうですね。すでにサムライインキュベートでアクセラレートは経験していたので、Plug and Playでもできると思いました。ただ、私としてはCOOよりキャピタリストとしてもっと成長にしたいと気づき、そのためにはもはや自分で独立するしかないのかなって当時は1ヶ月後に出産を控えていたため、産後6ヶ月のタイミングで事業をスタートしました。

起業によって輝ける人を増やしたい

─キャピタリストに手応えを感じたのはなぜでしょうか

私は起業する人を増やしたいんです。仕事は楽しいものだし、起業は人生としての学びも多い。また、一方では日本の組織体系が持つ課題も影響しています。今の日本には、指示された仕事をして、そこに対して不満を持つ人が多いですよね。ただ、その不満を他者のせいにしても、人生が良くなるわけではない。それなら起業して、自ら学びながらキャリアを積めばいいと思っています。

「起業してなにをしたいのか、さらにはどんな世の中にしたいのかを追求すれば、結果的には強い日本人が増えていくと思うんです」

─矢澤さん自身が起業しなくても、これまで通りキャピタリストとしてサポートすることは可能だと思うのですが

もちろん実務上は可能です。ただ、キャピタリストとして働いてはいても、自身が起業していない説得力の無さを感じていました。人には挑戦を勧めるのに、自分はサラリーをもらって守られている。また、人が集めたお金で、自分は安全に投資する姿もちょっと格好悪いなって(笑)。だったら自分もリスクを取って、同じ起業家としてサポートしようと思い、Yazawa Venturesを立ち上げました。

「高校時代から働くのが好きでした」と話す矢澤氏の笑顔がとても印象的だった。自らキャリアを描き、葛藤と挫折を経てたどり着いたキャピタリストの道。挑戦者と共に伴走したいと語った矢澤氏とYazawa Venturesの活躍を今後も追っていきたいと思う。

会社名株式会社Yazawa Ventures
住所東京都渋谷区上原1-3-9
代表矢澤 麻里子
設立2020年11月
Webhttps://yazawa.vc/
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